4.2. 顕微鏡で見る細胞の世界
https://gyazo.com/8d24df53276d2b30a55a8a85fb213bbe
https://amzn.to/2Pgh46k
多くのタイプに分化した数兆もの細胞からなる1つの協調的な社会
e.g. 心臓の拍動を保持する筋細胞
e.g. 筋肉を制御する神経細胞
e.g. 体中に酸素を運ぶ赤血球
行動と思考はどんなことでも細胞レベルで起こる過程の結果を反映したもの
顕微鏡は細胞の世界の窓
1600年代に顕微鏡が初めて使用されるまでは、生物の体が細胞からなっていることなど誰も知らなかった
ルネサンス期の科学者が使った顕微鏡の種類は、光学顕微鏡 light microscope (LM)
可視光が試料を透過する
ガラスレンズが像を拡大し、ヒトの眼またはカメラに投影される
顕微鏡の2つの重要な要素
倍率 magnification
試料の実際のサイズに対して、見かけのサイズの増大に関すること
倍率は分解能に依存する
分解能 resolving power
拡大像の鮮明さに関する
2つの物体を重なって見えることのないように見せる光学装置の能力
眼、望遠鏡、顕微鏡といった光学装置にはそれぞれ分解の限界がある
ヒトの眼は0.1mm
光学顕微鏡の分解能は0.2μm
このことは倍率を約1000倍に制限している
細胞は、樫の樹皮のコルク薄片を顕微鏡で観察したイギリスの科学者ロバート・フック Robert Hookeによって1665年に初めて記載された
続く2世紀の間に科学者達は顕微鏡で観察した生物のどれについても細胞を見出した
観察による証拠が蓄積した結果、1800年代半ばまでに細胞説が導かれた
細胞説 cell theory
すべての生物は細胞からなっており、そして、すべての生物は既に存在する他の細胞に由来するという説
細胞の構造に関する我々の知識は1950年代に生物学者が電子顕微鏡を使用することによって大きく飛躍した
電子顕微鏡 electron microscope (EM)
物体を解像するのに、光の代わりに電子線を使う
電子顕微鏡は光学顕微鏡に比べて分解能が格段に優れている
走査型電子顕微鏡 scanning electron microscope (SEM)
細胞表面の構造を詳細に調べるために使用する
透過型電子顕微鏡 transmission electron microscope (TEM)
特に細胞の内部構造を探るのに有用
現代の最も高性能の電子顕微鏡は0.2nmの小ささまで物体を識別できる
光学顕微鏡に比べて分解能が1000倍優れている
しかし、電子顕微鏡用の試料作成のためには、観察する前に細胞を殺して保存しなければならない
したがって、光学顕微鏡は生きた細胞を見る窓として今でも非常に有用
細胞の2大別
細胞の2つの基本的な範疇
原核細胞 prokaryotic cell
原核生物として知られる真正細菌ドメイン(Bacteria)と古細菌ドメイン(Archea)に属する生物の特徴
真核細胞 eukaryotic cell
真核生物ドメイン(Eukarya)の生物
原生生物、植物、菌類、動物
すべての細胞はいくつかの共通した基本的な特徴をもつ
形質膜 plasma membrane
細胞膜 cell membraneと同義
むしろ細胞膜のほうがより一般的
細胞を包む薄い外膜
この膜によって細胞と外界の間での分子の行き来を制御している
すべての細胞はDNAを持っており、リボソーム ribosomeというDNAの指令に従ってタンパク質を合成する小さな粒子をもっている
原核細胞と真核細胞のいくつかの重要な違い
進化的にみて原核細胞は真核細胞よりも古い
化石は、原核生物は35億年前に出現したが、真核生物は21億年前以前には出現していなかったことを示す
原核生物は通常、非常に小さく、典型的な真核細胞の長さのおよそ1/10で、構造も単純
構造上の最も重要な違いは、真核細胞が原核細胞にはない細胞小器官(オルガネラ) organelleを持っていること
膜で包まれた構造でそれぞれ固有の機能を果たす
最も重要な細胞小器官は核 nucleus
核は真核細胞のDNAのほとんどを納めており、二重膜で包まれている
原核生物は核を持たず、そのDNAは核様体とよばれる「核に相当する」領域に存在している
次のような類推を考える
真核細胞はいくつかの小部屋に分かれた1つの事務所に似ている
各小部屋では、それぞれに特異的な機能が遂行され、したがって多くの内部区画で分業が行われている
真核細胞の小部屋の仕切りは膜でできていて、その膜は各々の小部屋内部の、独自の化学的環境を保持するのに役立っている
対照的に原核細胞の内部は仕切りのない倉庫に似ている
特異的な機能のための空間は異なっていても仕切りによって隔てられているのではない
典型的な原核細胞
https://gyazo.com/a69fab643b9c43a24d7bc6f74cc9f224
細胞壁
ほとんどの原核細胞の細胞膜を包んでいる
4.1. 生物学と社会 : 細菌の細胞を標的にする薬剤から、細菌のリボソームと細胞壁がいくつかの抗生物質の標的であることを思い出して欲しい
莢膜
いくつかの原核生物では、細胞壁を包む粘液質の被膜がさらに外側にある
莢膜は細胞の保護と、原核生物が物の表面に付着するのに役立つ
線毛(ピリ)
訳注: 真核細胞の繊毛とは異なるので注意
これもものの表面に付着することができる
鞭毛
訳注: 真核細胞の鞭毛とは構造も構成成分も異なるので注意
多くの原核細胞はこれで液体の中を泳ぐ
真核細胞の外観
すべての真核細胞は、動物、植物、原生生物、菌類を問わず、基本的に似ている
https://gyazo.com/e53df62a54f4ee79fe0c9171ebf3ce1c
本書全体を通してこの色によって各構造を示す
細胞質 cytoplasm
核と細胞膜の間の細胞の、全領域
この用語は原核細胞の内部を指す場合にも用いられる
真核細胞の細胞質は溶液相とそこに浮遊する様々な細胞小器官からなる
ほとんどの細胞小器官は動物と植物の両方の細胞に見られる
動物と植物の重要な違い
植物細胞には葉緑体があるが動物細胞にはない
葉緑体は光エネルギーを食物の化学エネルギーに変換する細胞小器官
植物細胞は細胞壁を持っている
→4.3. 膜の構造